いつの間にか買い与えた覚えのないものを持っている子ども。
気づいて問い詰めると、しぶしぶ盗んだことを認めて…
自分の子どもがまさか他人の物を盗むなんて!!
初めは信じられないかもしれませんが、そこで認めずに問題を先延ばしにしていることは子どもをさらに追い詰める結果になってしまいます。
子どもの盗み癖の原因は何なのでしょうか。
今回は子どもの盗み癖の原因や子どもが物を盗んでしまう時の心理と、盗み癖のある子どもに親が出来る対応について紹介します。
小学生なのに盗み癖?!
小学生の窃盗事件は目立たないが存在する
内閣府から発行されている「平成27年度版 子ども・若者白書」によると、近年少年犯罪の件数は減少傾向にあります。
しかし、触法少年(14歳以下で刑罰法に触れる罪を犯した子ども)の中では12歳以下の割合が増えています。
その子どもたちが犯す犯罪は「窃盗」が最も多くなっています。
検挙人数も減っているものの、平成26年では30,037人が検挙されるという悲しい結果になっています。
近年では未成年を狙ったSNSを使った悪質なネット犯罪などが目立っていますが、12歳以下の小学生が窃盗によって検挙されるという事実も確かに存在しています。
(参考URL 内閣府 平成27年度版 子ども・若者白書 第3節 非行・問題行動)
盗み癖ってそもそもどういうこと?
「物を盗まずにはいられない」という症状として
「病的窃盗(窃盗癖、クレプトマニア)」という症状名があります。
自分ではコントロールしがたい欲求に襲われて、物を盗んでしまったり、その罪の意識からうつ状態になることのある精神疾患です。
この病気は子どもの頃から始まることもありますが、大抵はそのまま大人になることはありません。
通常は男性50歳頃、女性35歳頃に見られるようです。
この障害を抱える人達は特に欲しいものではないのに盗んでしまいます。
盗んだ後は捨てたり、人にあげたり、こっそり返しに行くこともあるそうです。
窃盗が悪いことだという意識は持っているので、盗みたい気持ちを抑えようとしながら、それに失敗してしまうのです。
頻繁に行う時もあれば、まったく盗まなくても平気な時もあるのも特徴的です。
小学生の「盗み癖」の場合、将来的に「病的窃盗」になっていく可能性もゼロとは言えません。
しかし、小学生の窃盗の場合は何かしらの背景や理由があって、そのうえで「盗む」という行動をとってしまっていることが多いものです。
どうして癖になるの?
「病的窃盗」の場合、物を盗む前には気持ちが高ぶり、スリルや快感、盗んだことへの開放感などを感じて満足します。
その刺激を何度も体験したいと思い癖になっていくのです。
小学生の「盗み癖」の場合は「盗む」理由が解消されないことで、癖になってしまったように何度も繰り返すのだと考えられます。
盗み癖のある子どもの心理
では子どもが物を盗む時、どんな心理状態にあるのでしょうか。
その心理状態は大きく次の4つに分けられます。
孤独な気持ちや不満など、ストレスを解消したい
子どもは構ってもらえない寂しさから、親の周りの気を引くためにあえて悪い行動を取ります。
悪い行動は、わがままを言う、赤ちゃん返りをする、兄弟を叩くなど、家庭内で解決できることから、窃盗や家出など反社会的な行動まで様々です。
怒られるような悪いことをして親からの関心を引こうとします。
関心を引こうとする自覚はあったりなかったりですが、もっと自分に注目させるための手段として「盗む」という行為をとっているのです。
単純にスリルを味わいたい
他人の物を盗むという行為は悪いとわかってはいるけれど、ドキドキやハラハラする感じを味わいたいという理由で盗みを行います。
一般的にはそのスリル感は不快なものなので避けようとします。
しかし例えば友人と一緒に企んで盗みがうまくいってしまった時などには、そのスリルは快の感情である達成感とすり替わってしまいます。
そのため、スリルを求めて何度も繰り返すようになるのです。
欲しいという気持ちを我慢できない
目の前のものが欲しい、と思ったら衝動的にとってしまうため、何度も盗みを繰り返し、癖になったように見えます。
この理由で盗みを繰り返す子どもは先天的に発達に課題のある可能性があります。
そうでなくても、「欲しかったのに買ってくれなかったから盗んだ」というように、盗みへの罪悪感をあまり持たない子どももいます。
衝動性を自分でコントロール出来ないため、怒るとすぐに手を出したり、盗み癖の他にも問題を抱えていることが多いものです。
他人の物を盗むことに抵抗がない
他人と自分のものの区別がつくのは2歳前後と言われています。
多くの子どもは、「人の物は盗ってはいけない」ということを生活の中で学習しながら成長していきます。
しかし、中には「物を盗むこと」が悪いと理解することのできない子どもも存在します。
悪いことだと分からないため、幼い頃と同様に「人のものをとる=悪いこと」という認識はなく物を盗ってしまいます。
盗み癖の原因~子ども本人、親、友人関係
子どもの盗み癖には理由があると説明しました。
では子どもの盗み癖を生む理由とはどのようなものがあるのでしょうか。
先天的な障害によるもの
発達障害を抱える子どもの中には、自分の気持ちをコンロトールすることの苦手な子どもがいます。
コントロールの難しい気持ちが、もしも「あの人の持っているものが欲しい」という気持ちだったとしたら、その衝動を抑えられずに勝手にとってしまうことになるでしょう。
この場合、医療機関や発達支援センター等、学校などと連携し、社会生活をスムーズに送ることが出来るようなサポートをしていく必要があります。
家庭環境
親が不仲だったり、過度な放任主義や過保護な家庭では、子どもは本当に自分は愛されているのかが不安になります。
その時に「盗む」という問題行為を行うことで、親に見てもらおう、関心を持ってもらおうとするのです。
もし家庭環境が子どもの盗み癖の背景にある場合は、子どもだけでなく、親も一緒にカウンセリングなどを受け、家族関係を見直していくことが必要になります。
友人の影響
友人との連帯意識を強めるため、悪いことだとは知っていても盗みを行ってしまうことがあります。
それを通じてスリルを味わうことで「一緒に悪いことをした仲間」と思ってしまい、何度も繰り返すようになります。
一方で集団の意見には逆らえなかったり、リーダー的存在の子どもに命令されたりといういじめの一環であることもあります。
そういった場合、見つかった本人は反省していてもう盗みたくないと思っていたとしても、友人の言葉に逆らえずに何度も盗んでしまう可能性があります。
そのため盗みが発覚した際に友人関係が絡んでいそうな場合は、しっかり事実を確認して、二度と盗みを犯さないように子どもを守る環境を整えることが大切です。
もし子どもが物を盗んだら…子どもの盗み癖に親がすべき対応とは
もし自分の子どもに盗み癖があったら…とてもショックで心がえぐられるような思いをすることでしょう。
しかしそこで落ち込んでばかりもいられません。
今後長引かせないために、親がしっかりと対応する必要があります。
ここでは子どもに盗み癖があった場合に親がすべき対応について紹介します。
しっかり向き合い、理由を聞く
子どもに盗み癖があるとわかると、親はとてもショックを受けます。
中には認めたくないという思いから、そのことに触れないように「タブー」扱いしてしまう可能性もあります。
しかしここでしっかり向き合わないことで、盗み癖は何度も繰り返されることになってしまいます。
まずは「なぜ盗んでしまったのか」という理由を冷静に聞き、しっかり理解しましょう。
子どもは怒られたくないとばかりに嘘をついたり、言い訳ばかりするかもしれませんが、そこは上手にかわしながらしっかり子どもの気持ちを聞き取りましょう。
悪いことをしたと理解させる
万引きなどの窃盗は見逃されやすい犯罪でもあります。
そのため、見逃されてしまうことで社会のルールを守るという意識が薄くなり、子どもがそこからズルズルと非行の道に入り込んでいく可能性があります。
しかし子どもに盗むことはいけないことだと理解させたいあまりに、感情的に激しく怒ったり、暴力で教え込もうとする方法は良くない方法です。
親が真剣に「盗むことは犯罪行為で、罰を受ける行為だ」と伝えることはとても重要です。
反省する我が子の姿に、(ちょっと叱りすぎたかな)(本当はわかっているんだろうし、気の迷いだっただろうから…)などと思ってしまい、慰めたりしたくなるかもしれません。
しかしその一瞬の甘さが子どもには「やっぱり大したことじゃなかったんじゃないか」と思わせてしまう原因になってしまいます。
犯罪行為である窃盗は、絶対に許さない!という態度で接しましょう。
親子でしっかり謝罪する
盗んだ相手に子どもから謝罪させるのは当たり前です。
ここで子どもだけに謝罪をさせるのではなく、親も同じように反省し、頭を下げる姿を見せましょう。
親の愛情を確認したい子どもにとって、自分のために頭を下げる親の姿を見ることで、子どもは親の愛情に気が付き、深く反省するはずです。
しかしここで「お前がこんな事しなければ謝らなくてもすんだ」「お前のせいだ」など、子どもの心を傷つけるような言葉をぶつけてはいけません。
「親が謝っていたのは自分のためではなく、体裁が大切だったからだ」、と思われてしまい、さらに孤独になった子どもは問題行動を悪化させてしまうかもしれません。
子どもだけの問題にしない
子どもが窃盗を行う理由を聞き、相手方に親子で謝罪するなどを済ませ、問題がひと段落したら、次からが最も重要であり大変な時期です。
盗み癖をこじらせないために、親子関係・家庭環境の改善を試みましょう。
子どもが盗み癖から何を訴えているのかをしっかり把握するために、親子でカウンセリングを受けたり、家族で過ごす時間を増やしたりしましょう。
子どもの問題としてだけでなく、家族の問題として捉え、盗み癖が再発しない環境を作っていきましょう。
まとめ
子どもに盗み癖があることに気づいた時はひどくショックを受けて落ち込むはずです。
しかしそれは子どもからのSOSです。
それをなあなあにしてしまったり、見逃してしまうことでさらに子どもを追い詰めてしまうことになり、問題行動を悪化させる結果になってしまいます。
しっかりと子どもに向き合い、二度と盗み癖を繰り返さないために家族の問題として向き合っていきましょう。