見出し
「試し行動」という言葉を聞いたことはありますか。
これは子どもの愛情確認のための方法です。
例えば大人のほうをチラチラ見ながら食事を床に落としてみたり、本をわざと破いてみたり…。
「こんな悪いことをしているけれど、本当に自分を好きでいてくれる?」
そんな子どもの心理が隠された試し行動。
その対処法や関わり方、気をつけなければならないポイントはどのようなものがあるのでしょうか。
今回はその「試し行動」についてお伝えしたいと思います。
子どもの「試し行動」って?
試し行動とは?
子どもの「試し行動」とは、子どもが自分自身をどこまで受け止めてもらえるのか、反応を見ようとわざと大人を困らせるような行動をとることです。
この試し行動は、2歳前後のいわゆる「イヤイヤ期」以降に始まる自我の芽生えによる反発とは異なり、愛情確認のための行動です。
そのため大人を信頼対象としていない、虐待を受けた子どもにより多く見られる行動です。
また離婚・再婚家庭で「また見捨てられないだろうか」と不安を抱えた子どもが、継母・継父、もしくは面倒を見てくれる祖父母などに行うこともよく見られます。
子どもの試し行動の例
では具体的に「試し行動」とはどのようなものがあるのでしょうか。
年代別の行動の特徴について紹介します。
低年齢の場合
幼児期では、激しく泣き叫ぶ、物を投げる、噛む、たたく、過度のわがままなどがあります。
それまで出来ていたこと、例えばトイレなどが出来ず、おむつをしたがるなどの赤ちゃん返りの形で表現する子どももいます。
小学校に入るくらいになると、大人の顔を見ながら叱られるのがわかっていることをしたり、直前に注意されたことを何度も繰り返すなど、「悪い」とわかっていることをアピールするように行うことが目立ってきます。
小学校中学年~思春期
このころになってくると単純に大人への反抗的な行為だけではなく、非道徳的なことや、反社会的なことも目立ってきます。
不登校や引きこもりなど他人との繋がりを断とうとする行動や、友達へのいじめや、万引きなど法に触れる行動に及ぶこともあり、対応はより困難になってきます。
また売春行為などの性犯罪にも発展することがあります。
子どもが試し行動をする理由
「試し行動」の理由はただ一つ、愛情確認です。
どこまでなら受け入れてもらえるのか、また同じように見捨てられるのではないか、という大人の愛情への不安を行動として確かめているのです。
この時のポイントは子ども自身が大人の顔色をうかがいながら、気を引くようにあえて悪いと思っていることをするところにあります。
これは成長とともに自然になくなっていくものではなく、親の愛情を納得できるまで色々な形で表現されます。
試し行動をする子どもへの対処法と関わり方 2つのポイント
1、子どもへの愛情を伝え続けること
一番のポイントは子どもに愛情を伝え続けることです。
試し行動によって大人の側も感情が揺れ動きます。
悲しくなったり、理不尽さに感情的に怒りをぶつけてしまったり…。一方でそんな自分に嫌気がさして罪悪感でいっぱいになってしまったり。
どうしてそんなことをするのかというと、子どもは「見捨てられないか不安」だからです。
そのため大人は苦しい気持ちを抱えていても、「あなたのことを愛しているよ」と伝え続けることが試し行動を早く解消させるためのポイントです。
2、良いこと・悪いことの区別を明確にすること
試し行動をした時に、ある時は許し、ある時には激しく叱る…なんて一貫性のない対応をしていては状況は悪化するばかりでしょう。
大人が自分の感情のみでその場限りの対処をすることで、子どもはさらに愛されているのか不安になり試し行動は悪化します。
そのため、善悪の判断を大人がしっかり行い、「ここまではいいけれど、ここから先はダメ」とライン引きをする必要があります。
このラインをしっかり大人が持っているということが、子どもにとって信頼関係を築けるかの目安になるのです。
怒るのはダメ!試し行動を怒ることでのリスク
子どもの試し行動では大人もその理不尽さにイライラしてしまうもの。
そこでその行動をやめさせようと、むやみに怒りをぶつけるのは良い方法ではありません。
怒りでは子どもの「自分は本当に愛されているの?」という不安や不信感は消えません。
もし試し行動を怒り続けるとどうなるのでしょうか。
「試し行動=怒られる」のパターンが出来てしまい、子どもはどんどん不安になります。
そのため試し行動がエスカレートする可能性があります。
そして子どもは「愛されている」「認められている」という人との信頼感を得ることができず、とても不安定な人間関係を築くことしか出来なくなってしまいます。
そのことは将来的に不登校であったり、非行、引きこもりなど、社会に適応しづらい状況に繋がるリスクが高まる原因になってしまうのです。
試し行動がエスカレート!もう手に負えない… そんな時はどうしたらいいの?
「受け入れる」ことと「好きにさせる」ことは違う
子どもの試し行動を「受け入れる」ことと、「好きにさせる」ことは違います。
子どもの気持ちに応え、十分に安心するまで子どもを認めるのは大切なことです。
しかし好き放題させているだけでは、試し行動はエスカレートしていく一方になるでしょう。
子どもはある程度「してはいけないこと」を理解し、試し行動を行っています。
それをあえて見逃し、叱らないようでは子どもは「叱られない=愛されていない」と感じ、さらに大人を振り回すようになります。
試し行動であっても、危険なことやしてはいけないことをしっかり伝え、根気強く子どもと向き合っていくことが大切です。
対応に限界を感じたら…
子どもの試し行動がもう自分たちの手に負えないと感じたら…。
そんな時は専門機関に相談しましょう。
例えば…
- 保健センター
- 児童相談所
- 医療機関
などです。
もしかしたら試し行動の背景には発達障害や病気があるかもしれません。
色々な方向から子どもの姿をとらえるために、保健師や医師、心理士などのチームで対応出来る機関に相談するのが良いでしょう。
外部の機関に相談することは「親失格」ではありません。
誰よりも真剣に子どもの事を心配し、考えている証拠です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
愛情を確認したいために大人を困らせる子どもの試し行動。
しかしそんな行動をとっているとき、子どもの心の中は不安でいっぱいなのです。
もし試し行動に気づいたときは、しっかり愛情を伝え、大人がどんと構えて対応していくことが大切です
怒ってしまっても仕方ない場面だけれど、逃げずにしっかり自分に向き合ってくれる。そんな大人の姿を見せることが子どもの安心に繋がります。
しかし激しい試し行動に大人も対応が難しくなってしまったときは、専門家に相談するのが大切です。
色々な角度から子どもの姿を見ることで、新しい解決法が見つかるかもしれません。