母乳育児が推奨されている昨今では母乳の出が悪いことで多くのママたちが悩んでいます。しかしその一方で、母乳が出すぎて困っているママたちもたくさんいます。
出ないママからすれば贅沢な悩みのように思ってしまいますが、母乳過多には様々なトラブルがあるのです。
そこで今回は母乳の出すぎで起こるトラブル、原因と改善・対処法についてお話ししていきます。
母乳が出過ぎるとどうなるの?母乳分泌過多症の困ったトラブル!
赤ちゃんが飲みきれないほど母乳の分泌量が多すぎる状態、また乳房内に常に母乳が溜まったままの状態を母乳分泌過多症といいます。
これを判断する目安の1つとして、母乳パッドを1時間ごとなどの短い時間で取り替えないといけないようなら分泌過多の疑いがあります。
また母乳分泌過多症にはママや赤ちゃんの身体に次のようなトラブルが起こりやすくなります。
ママ側のトラブル
乳房・乳頭が痛んだり傷つきやすくなる
母乳が出過ぎる場合、しっかり乳頭を深くくわえて飲むと、赤ちゃんの口に溢れかえってしまい苦しくなってしまいます。
そのため赤ちゃんはつい浅めに乳頭を加えてしまうので乳房や乳頭に負担がかかってしまい切れたりします。
逆に母乳量が激減して足らなくなる
母乳過多は少しの刺激や吸われていない状態でも勢いよくたくさん出てきてしまいます。
そのため赤ちゃんも一生懸命吸わなくても勝手に出てきて飲めると思い、きちんと吸ってくれなくなります。
すると刺激を受けなくなったおっぱいは母乳をあまり作らなくなります。タイミングが悪いと母乳をたくさん飲む時期なのに母乳量が激減してしまう可能性もあります。
乳腺炎になりやすい
母乳の分泌量が多すぎることで赤ちゃんにとっての必要量を上回ってしまいます。
そのため赤ちゃんが飲み切れなかった分の母乳が乳房内に残ってしまい、詰まりをおこして乳腺炎になりやすいのです。
何もしなくても母乳が出てきてしまう
母乳分泌が多い人のトラブルとしてよく耳にするのは「授乳してなくても勝手に母乳が出てきて止まらず、1〜2時間で母乳パッドがいっぱいになってしまう。洋服まで染み込んでしまうこともよくあるので外出もままならないこともある。」といった悩みです。
他にも授乳中赤ちゃんの飲んでいない側のおっぱいからどんどん母乳が出てきてしまうので、タオルやペットボトルなどで片方を抑えながら授乳しないといけないなど、様々な支障が出てきてしまいます。
赤ちゃん側のトラブル
赤ちゃんの消化機能にダメージ
母乳の成分は飲み始めから終わりまで一定ではなく変化していきます。
前半は脂肪分が少なく水分量が多い、後半は脂肪分が高く水分量が少ない母乳が出ます。
赤ちゃんの栄養のためには後半の脂肪分の高い母乳を与えることが大切ですが、母乳過多の場合、赤ちゃんがすぐお腹がいっぱいになってしまい後半まで飲み切ることができないまま終わってしまいます。
前半の脂肪分が少ない母乳はお腹にたまりにくく、消化の際に多くの乳糖が胃に流れ込んでしまいます。そして乳糖過負荷の状態になり乳糖を消化し切れないため消化器官にダメージを与えてしまうのです。
消化がうまくいかないのでゲップやオナラがたくさん出たり、緑色のウンチや水っぽい泡立ったウンチなどが出るといった症状も出てしまいます。
赤ちゃんの機嫌と体重の増え方が悪い
1の原因により、脂肪分の少ない母乳だけでお腹がいっぱいになってしまうため、必要な栄養やエネルギーが摂取できません。そのためいつも空腹で機嫌が悪くなったり体重もあまり増えなくなってしまうことがあります。
また乳糖過負荷の状態により、おならのガスでお腹が張って苦しくなってしまい泣いたりグズったりしやすくなります。
飲みすぎてしまい吐く
赤ちゃんはある程度大きくなるとお腹いっぱいになれば自分から飲むのを止めてくれます。しかし新生児から低月齢の頃は自分の許容量がわからず、満腹感を感じるまで飲み続けてしまう傾向があります。
そのため母乳過多の場合、赤ちゃんが許容範囲を超えてしまった分を吐き戻してしまうのです。なかには飲みながら鼻から母乳がたれてきてしまう赤ちゃんもいます。
母乳が出過ぎる原因は?
母乳分泌過多にはママの体質と授乳・搾乳に原因が考えられます。
ママの体質が原因
過剰な乳腺の発達
乳腺の発達にはそれぞれ持って生まれた体質の差があります。
乳腺の発達が良すぎる人は母乳分泌過多症になりやすい傾向があります。
プロラクチンの分泌量が多すぎる
プロラクチンは乳腺の発達や母乳分泌を促す作用のあるホルモンですが、このプロラクチンの過剰分泌によって母乳過多を引き起こしている場合があります。
プロラクチンの過剰分泌には産後の女性がかかりやすいといわれている甲状腺の病気が隠されている可能性があるので、あまりにも長引くようなら病院を受診してみましょう。
オキシトシン反射(射入反射)が強すぎる
オキシトシン反射は赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によって母乳の出を良くするオキシトシンというホルモンが分泌され、おっぱいにツーンとした感覚が走る反応のことをいいます。
このオキシトシン反射の作用が強すぎると母乳が急激に過剰分泌されてしまい赤ちゃんが吐き戻してしまうのです。
授乳の仕方・搾乳が原因
赤ちゃんが上手くおっぱいを吸えていない
最初の頃は赤ちゃんがまだ上手におっぱいを飲むコツがつかめていません。
しっかり乳輪を深くくわえて吸付けていないことで、乳頭の先ばかり強く吸い上げている状態になり必要以上の刺激をおっぱいに与えてしまいます。
これにより母乳を過剰分泌させてしまい母乳過多になってしまいます。
左右の授乳交代のタイミング
一般的に左右のおっぱいを吸わせる時間は左右5分づつを2回で計20分が目安となっています。
しかし母乳過多の場合はこのように時間を決めて左右の授乳を交代させていると、その時間では十分に吸わし切れていないまま、もう片方のおっぱいを吸わせることになります。
すると先に吸わせた方のおっぱいが今吸わせている方の射入反射に影響されてしまい吸わせていない方のおっぱいから母乳が出てしまうといった状態になってしまいます。
また母乳が全部排出できていないのに母乳がドンドン分泌されてしまうので、常におっぱいの張りが治らず母乳過多状態になってしまうのです。
搾乳のしすぎ
分泌過多の人は母乳の張りが激しいため搾乳をして張りを鎮めようとします。
しかしその張りの辛さからつい搾乳をしすぎてしまいます。
搾乳はすればするだけ母乳を作ってしまう仕組みなので、余計に張りが止まず辛くなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
母乳過多の改善・対策法
搾乳しすぎない
搾乳のしすぎはさらなる母乳分泌を促してしまい悪循環になってしまいます。必要以上に搾乳しないようにしましょう。
特に母乳過多になりやすい生後2〜3ヶ月は辛くても圧抜き程度にした方が賢明でしょう。
(圧抜きの方法は別記事『赤ちゃんがおっぱいを飲まない!拒否する原因と対策』に乳頭マッサージとして記載しています)
おっぱいを冷やす
おっぱいは温めると出が良くなります。逆に冷やすと張りが治まり、熱を持った乳房が和らぎます。
冷やすといっても急激に冷やしすぎると逆に張りが一層強くなってしまうので、やんわりと少しずつ冷やすようにしましょう。
昔ながらの方法としては冷蔵庫などで冷やしたキャベツをおっぱいに貼り付ける「キャベツ湿布」があります。また市販の冷却シートなどで冷やしてください。
食事見直し
脂っこい食事や甘いものなどは乳腺が詰まりやすくなる原因になります。
ただでさえ過剰に分泌されている母乳が排出できずに悪化し、乳腺炎を引き起こしやすくなります。乳腺炎のリスクを避けるためにも脂質や糖質の多い食事は避けるようにしましょう。
(尚、乳腺炎の予防に関しては別記事『母乳が詰まる…つまりの原因とその解消法とは?』に記載しています。)
授乳の仕方
左右の授乳の交代のタイミングを時間できっちり区切らずに、授乳中のおっぱいの張りを確認しながら、十分に出し切るまで吸わせるようにしましょう。
低月齢の頃の赤ちゃんだと片方のおっぱいだけでお腹いっぱいになってしまうかもしれませんが、その場合は次の授乳の時までもう片方の授乳は我慢し、どうしても辛いなら圧抜き程度に抑えておき、次の授乳でしっかり吸ってもらうようにしましょう。
これを繰り返しているうちに自然と過剰な母乳分泌も張りも減っていき、母乳量がコントロールできるおっぱいになってきます。
授乳の体勢
授乳は赤ちゃんが上手に吸いやすいような授乳体勢と、赤ちゃんがしっかりと深く乳輪部を含めているかどうかの両方が上手く成り立っていることで正しく授乳ができているといえます。
吸いやすい授乳体勢は赤ちゃんによって様々なのでいろいろ試してみましょう。
(尚、授乳体勢、ポジショニングに関して詳しくは別記事『赤ちゃんがおっぱいを飲まない!拒否する原因と対策』に記載しています。)
まとめ
いかがでしたか?
母乳過多は周りから悩みだと思ってもらいにくいので一人で悩んでしまいがちですが、十分重大な母乳トラブルです。
今回ご紹介した対処法で改善しない場合は母乳外来などで専門の母乳マッサージを受けてみるのもいいと思います。
1日も早く楽しい授乳時間が過ごせるよう祈っています!